☆彡Grossブログ:ゼロから始めるステイン講座 Ⅶ


『ゼロから始めるステイン講座 Ⅶ』

 

透明だけど透明感がない?

モノリシックセラミックスについての考察 ⑤

 

 

ステイン講座も早7回目。

 

これまで「透明感」についての法則性や、

色彩学の基礎をメインに紹介してきました。

 

しかしステイン講座Ⅱ~Ⅵを読んでも、

 

「実際どうしたら透明感を出せるのか?」

 

については、まだイマイチ実感が

沸いていないのではないかと思います。

 

実のところ、第一回の

「気になるステインの選び方」に

ある程度集約されてはいるのですが……、

 

ステイン講座Ⅱ~Ⅵはそれに対する

理由付けといった意味合いが強いのです。

 

 

そんな前振りも終わり、いよいよ本題。

 

さて、ステインをどうコントロールすれば

クラウンへ透明感を付与できるのか?

 

これまで紹介してきた色彩学は、

どういった形で臨床に直結するのか?

 

今回から具体的なところに踏み込みます。

 

 

●補色関係にある色同士は、

 それぞれ打ち消し合う働きがある

 

 

前回は「補色」の定義を簡単にご紹介しました。

おさらいですが、「正反対の色」のことですね。

 

参考までに補色対比表をもう一度。

 

さて、この補色において最も大切なことは、

 

減法混色において

補色関係にある色同士は

それぞれ打ち消し合う効果がある

 

ということです。

 

ん?打ち消し合うってどういうこと?

 

 

ここで光の反射と吸収の話を思い出してください。

参考画像をもう一度。

 

イチゴが赤く見えるのは、

イチゴという物体が赤い光のみを反射し、

他の色を吸収してしまう特性を持つからである。

 

なるほど。

 

では打ち消し合うとはどういう状態でしょう。

 

結論から言って、の補色がである時、

赤い光青い光はそれぞれ吸収し合う働きがあり、

同時に重なると無彩色光(黒色)となる。

 

ということです。

 

図解してみましょう。

 

こちらの図によると

イチゴの反射した光はフィルターに遮られ、

黒色となってしまうことが分かります。

 

これは補色効果によって赤味が打ち消され、

更に光量の低減によって明度低下するからです。

 

この時どの程度の黒色になるかは、

赤と青の彩度によって異なります。

 

つまり、

 

淡い赤淡い青を1:1で混ぜればグレーになり、

濃い赤濃い青を1:1で混ぜればになる、

 

ということです。

 

 

では、濃い赤に対して淡い青

9:1程度で重ねたならば?

 

やや赤みを失い、やや明度の落ちた

くすんだ赤色になります。

 

これが減法混色における、

補色の基本概念なのです。

 

ちなみに補色ですが、吸収効果を得るためには

下図の様な方法があります。

 

 

 

●光の「吸収」と「透過」は

 よく似ている

 

さて、互いの色を吸収し合う「補色」ですが、

実際臨床でどのように応用するのでしょうか。

 

ともすれば、まずは「透過とはどういうことか」

から解説していきましょう。

 

ヒトの目は、

物体を反射光によって認識しています。

 

光が透過するということは、

物体に入射した光がほとんど反射せず、

突き抜けてしまう状態を指します。

 

透過性が高くなればなるほど

光の反射は少なくなりますから、

段々とその物体を視認できなくなります。

 

いい例が空気です。

基本的に、空気は視認できませんよね?

 

 

ところが、粉塵が舞ったり湯気が立てば

そこで初めて空気というものが視認できます。

 

これは粉塵や水分が光を反射するからですね。

その反射光を視認しているのです。

(正確には空気というより

水や粉塵が見えているだけですが)

 

 

ちなみに光の特性として、

「透過」と似たような現象があります。

 

それは「吸収」です。

 

既に補色の話をしていますので

ピンと来る方は多いと思いますが、

上の図に準えてもう一度おさらいしましょう。

 

電話機が黒く見える理由は、この電話機の表面に

ほぼ全ての色を「吸収」する働きがあり、

反射光が無彩色光となっているからです。

 

先ほどの図と比べると面白いことに、どちらも

「光が行ったっきり帰ってこない状態」

という点においては同一です。

 

つまり「透過」と「吸収」は

視覚的に一致する……?

 

そうなのです。

 

 

光が吸収されて反射しない状態と、

光が透過されて反射しない状態。

 

人間の目はこれを

正確に区別ができないのです。

 

いわゆる「トリックアート」が

これを利用したものになります。

 

https://www.youtube.com/watch?time_continue=14&v=g40K1wYFO_Q

YOUTUBEで見つけた面白動画ですが、いい例ですね。

 

 

 

 

●補色の吸収特性を利用して

 透過しているように錯覚させる

 

 

ん?

 

補色は光を吸収し合う……

 

吸収と透過はよく似ている……

 

もうお分かりですね。

 

補色をうまく利用すれば、

「光が行ったっきり帰ってこない」

状態の再現が可能なのです。

 

 

つまり、ブルー系の色を塗ると透明に見える!

 

……のではなく。

 

ブルー系の色を塗ると、

下地のオレンジ系の光を吸収するから

透明に見えるのです。

当然、

 

下地にオレンジ系の色が無ければ

ブルー系を塗ったところで

単に青くなるだけ

 

なのです。

 

真っ白なフルジルコニアクラウンに

ブルー系を塗っても透明感が出るはずもなく、

ただ青いクラウンが出来上がるだけです。

 

 

●錯覚効果を増幅する為に

 反射層を内部に入れ込む

 

 

とはいえ、人間は両目で立体視をしていますし、

角度を変えて見ることでも立体認識しています。

 

経験則からしても、透明な物体と

暗いだけの物体を見間違うことは

ほぼ無いと言って良いでしょう。

 

写真や動画では肉眼を騙せても、

単純な吸収効果のみで、

完全な透明感を得るのは極めて難しいのです。

 

いくら黒電話が光を吸収するといっても

無彩色光の表面反射は視認できていますから、

 

単に光を吸収さえさせれば透明に見える!

というわけでもないのです。

 

ただし、下地が元々半透明であったなら?

おまけに、吸収効果のある塗装をした上に、

実際に透明な層を重ねて立体感を出せたなら?

 

そう、これが外部ステイン法における

ステイニングとグレーズペーストなのです。

 

ステイニングで透明感を再現するためには、

グレーズペースト層にある程度の厚さが

求められます。

 

これは内部ステインテクニックにおける

表層トランス築盛の関係とも一致します。

 

 

透明感を高めるためには

 

表面反射を減らし、反射層(ステイン層)を

透明層の内部に入れ込むことが大切なのです。

 

 

 

 

今回はここまで。

 

「ゼロから始めるステイン講座Ⅷ」に続きます。

 

次は実際のステイニング手順を踏まえ、

どういったコンセプトでどこに

どんな色を塗るのかを紹介したいと思います。

 

 

【過去の関連ブログへのリンク】

Ⅰ. 『ゼロから始めるステイン講座 Ⅰ』  

   ~気になるステインの選び方~    

 

Ⅱ.『ゼロから始めるステイン講座 Ⅱ』

     ~内部ステインと

        外部ステインのコンセプト~

 

Ⅲ.『ゼロから始めるステイン講座 Ⅲ』

   透明だけど透明感がない?

モノリシックセラミックスについての考察 ①

 

Ⅳ.『ゼロから始めるステイン講座 Ⅳ』

   透明だけど透明感がない?

モノリシックセラミックスについての考察 ②

 

Ⅴ.『ゼロから始めるステイン講座 Ⅴ』

   透明だけど透明感がない?

モノリシックセラミックスについての考察 ③

 

Ⅵ.『ゼロから始めるステイン講座 Ⅵ』

   透明だけど透明感がない?

モノリシックセラミックスについての考察 ④

 

 

 ライター 髙瀬 直