☆彡Grossブログ:ゼロから始めるステイン講座 ~気になるステインの選び方~

 

『ゼロから始めるステイン講座 Ⅰ』

 ~気になるステインの選び方~

 

  「e.maxうまくいかないんだけど。

     いつもどんなステイン使ってんの?」

 

           先日、友人からLINEで

           こんな質問を受けました。

 

 

           確かに気になりますよね。

 

e.maxやジルコニアなどのステイン法は

塗り方も大切ですが……

 

何より適切なステイン選びが

文字通り明暗を分けます。

 

どういった部位に

どんなステインを塗れば良いのか……

 

……ざっくりしとした

メーカーのパンフレットはあっても、

実際に臨床レベルまで踏み込んだ

マニュアルは存在していないのが現状です。

 

ちなみに、私は主に松風社の

Vintage Art(以下本家)および Vintage Art LF(以下LF版)

を使用しています。

 

 

折々他社製品も使用するものの…

発色や使い勝手の慣れからなんだかんだ

コレで落ち着いてしまうんですよね。

(別の機会でメーカー別ステインの特徴

なんかも題材にできたらいいのですが…)

 

 

そこで今回はVintage Artシリーズの中でも

とりわけ使用頻度が高く、

汎用性に優れたもの

何点かピックアップしてみました。

 

ぶっちゃけ、これだけ揃えとけば

最低限ステインワークで困らないよ!

 

といったくらいのラインナップだ

と思っています。

 

(もちろん、よりリアリティを出したい場合は

豊富な種類のステインが必要です。)

 

 

特徴や使用感を体感レベルで雑記しましたので、

何かの参考になれば幸いです。

 

尚、ステインの塗り方や色調理論については

下記を参照下さい。

 > 天然歯の色調理論 04:色調分析に必須とされる明度、色相、彩度とは?

 > 老年代前歯オールセラミックスクラウンの築盛法とステイン法の比較

 

 

 

 

●Aシェード(LF Aシェード)

A系統の色のステイン。

各メーカーから同名のステインが

多数リリースされている。

 

Aシェードとはいうものの、単純に

これを塗るだけでA系統になる場合は少ない。

 

全体的に緑がかっているe.max LT系統などは

その傾向が顕著である。

彩度の補強目的に使う場合は

明度を大きく落としやすいので

オレンジとの使い分けが求められる。

 

LF版は本家と比べて色調差が大きく、

発色が弱い代わりに全体的にふんわりと

色付けをするのに向いている。

 

 

●オレンジ(LF オレンジ)

象牙質のもつ暖色を再現しやすい。

汎用性が高く、ローズピンクやワインレッドと

混ぜてA系統の彩度強化に用いる。

 

また、ブルーグレーと混ぜれば

Aシェードの様な使い方が出来る。

彩度強化目的としては比較的明度を落とし難く、

使用頻度は高い。

 

LF版は本家と比べて色調差が大きく、

発色が弱い代わりに全体的に

ふんわりと色付けをするのに向いている。

 

 

●ブルーグレー(LF ブルーグレー)

文字通りブルーとグレーの混合タイプ。

欧州では「鳩色」と称されることも。

 

下地のオレンジ・イエローを吸収し、

透明感を表現するのに重用する。

 

グレーと異なり補色作用が働くため、

視覚的に大きく透明感を得られる。

 

ただし、

 

下地にオレンジ・イエロー要素のない真っ白な

ジルコニアに塗布しても単に青くなるだけ

透明感を得られないので要注意。

 

目安として、塗ってみて「青いな」と思えたら、

下地のオレンジ・イエローが足りない

と判断して良い。

 

LF版は本家と色調差が小さく、

発色がやや弱い代わりに

ムラになり難い特性をもつ。

本家とLF版を1:1で割ると融点も下がり、

使い勝手が向上する。

 

 

●ダークレッドブラウン(LF ダークレッドブラウン)

強力な彩度を発揮する赤茶色のステイン。

ヘアラインや臼歯の裂溝等、

ピンポイントながら使用頻度は高い。

赤みが強く、

意外に汚らしくならないのがメリット。

 

またワインレッド、ローズピンクに少量混ぜる

ことで強い赤みのサービカル色を表現できる。

 

LF版はピンポイント使用には向かない為、

本家と混ぜて使うと良い。

 

 

●LF バニラ

ホワイト系のステイン。

ややクリーム色に近い色調で、

A系統の色を僅かながら有している。

 

ホワイト系ながら極端に彩度を落とさない為、

白帯や脱灰部の表現に重用する。

他のステインと異なり、

本家よりもLF版の使用頻度が高い。

 

注意点として、

焼成後、6割程度に発色が低減する為、

やや強調して塗布する必要がある。

発色を強化したい場合は、

本家ホワイト+LFオレンジ(極少量)

を混ぜ込むと良い。

 

 

●オレンジブラウン

オレンジの彩度強化版。

咬合面の深みの強調や隣接部、

前歯切端部の着色域に使用する。

 

A系統から絶妙に外れることの多い、

強い彩度の老年代歯牙に対しても有用である。

 

LF版は本家と色調差が小さく、

発色はやや弱い代わりに

ムラになり難い特性を持っている。。

本家とLF版を1:1で割ると融点も下がり、

使い勝手が向上する。

 

特に臼歯咬合面のインターナルステインとして

使用する場合には、LF版あるいは

上記の本家&LF混合を使用すると良い。

 

 

●マメロンアイボリー

主にインターナルステインに用いる。

マメロン部の強調といった他、

クラックラインの表現としても有用。

 

インサイザルヘイローの表現として

使えなくもないが、

不透明すぎる上にムラになり易い。

 

LFバニラ+LFオレンジ(少量)と混ぜると

使い勝手が向上する。

 

 

●ローズピンク

主にサービカル付近、

歯肉色を反映したピンク色の表現に用いる。

特に形成ラインが浅い場合、

マージン付近に塗布するか否かで大きく差が

生まれる。

 

オレンジやAシェードと混合することで

レッドシフトシェードが再現できる。

またe.maxインゴットが初期から有する

青緑系統を、補色として打ち消す一役をも担う。

 

LF版は本家と色調差が小さく、発色がやや弱い

代わりにムラになり難い特性をもつ。

本家とLF版を1:1で割ると融点も下がり、

使い勝手が向上する。

 

 

                                                                               ライター 髙瀬 直