『ゼロから始めるステイン講座 Ⅳ』
透明だけど透明感がない?
モノリシックセラミックスについての考察 ②
「透明感」には一定のルールがある
前回のガラスの地球儀の写真ですが、
実際に透明な物体ではなくとも、
透明感に溢れる表現が可能であることは
ご理解頂けたと思います。
では地球儀の写真から、
日本列島あたりを切り抜くとどうなるでしょう?
・・・・・・どうでしょうか。
日本海や太平洋、透明感溢れてみえますか?
当然、見えませんよね。
ただ切り抜いて左に移動させただけなのに、
何故透明感が無くなってしまったのでしょうか?
今度はこちらの画像をご覧ください。
やはり波打ち際は透明感溢れ、
瑞々しく見えていることかと思います。
それでは、この画像をスタンプツールで加工し、
水面の泡や小波をつぶしていくことで
下地の色のみにしてみましょう。
だいぶ雑な加工ですが、どうでしょう。
一気に透明感が無くなって見えませんか?
単純にボケてしまったことが原因でしょうか。
なるほど、どうやらぼかしただけでは
透明感は失われないようです。
透明感を表現するために、
一定したルールの必要性が垣間見えます。
「透明感」の表現には対比効果、
額縁効果、表面性状の付与などが必要
ステイン講座Ⅱでも触れましたが、
外部ステイン法のキモは、
①本来半透明で透明感に乏しいものを
②補色による対比効果や光の吸収特性等を利用し
③局所的に透明に見せかけることにより
透明感を表現する
ことにあります。
先ほどの地球儀の写真を分析してみましょう。
概ねこんなところでしょうか。
順を追って解説していきます。
●周囲と比較して明度の低い箇所
高透過性とは、光が反射しにくい状態を指します。
光が反射せず突き抜けるわけですから、
当然明度は低い状態になります。
逆に言えば、
暗く見える所は透明に見えやすいのです。
●ハレーション、表面性状、表面付着物
透明な物体は、
表面に浮遊物やハレーションがあることで
初めて透明であると視認できます。
光を一切反射しない、本当に透明なものは
そもそも視認することができません。
こちらの画像をご覧ください。
窓ガラスに張り付いたバッタです。
※虫が苦手な方のためにモザイクをかけました。
この写真ですが、もしバッタが居なければ、
窓ガラスの存在を認識できないと思います。
続いてこちらの画像も同様です。
池に浮く蓮ですが、もしこの蓮がなければ、
ただの暗く真っ青な画像になってしまうでしょう。
どちらの画像も透明層の上に不透明なもの、
つまり光の反射が存在していることで
透明層を認識できているのです。
ハレーションも光の反射です。
また、表面性状が複雑化することで
光が乱反射し、ハレーションが複雑化します。
先ほどの海辺の写真における小波や
泡立って白くなっている部分がこれに該当します。
透明感の表現においては、表面性状次第で
効果が増大可能であると捉えて良いでしょう。
●額縁効果
額縁効果も透明感の表現に欠かせない存在です。
上記の表面性状や表面付着物と併せることで
強力な効果を発揮します。
こちらの窓ガラスのイラストをご覧ください。
うーん?
透明感どころか、
そもそも窓ガラスであることさえ
認識できません。
ではこれならどうでしょう。
なんだか一気に窓ガラスには見えてきました!
でもまだ透明感がありません。
ダメ押しでハレーション追加!
これでようやく透明感のある
窓ガラスっぽく見えてきました。
このイラストでは読んで字のごとく
「額縁」ですが、先の地球儀の写真を鑑みても、
高い透明感を表現する上で
額縁効果が必須であることが分かります。
●対比効果
透明感の表現には対比効果も需要です。
光の透過する暗い部分と、
光を反射する明るい部分の境界をはっきりさせて
メリハリをつけることで、
透明感を大きく表現できます。
境界がぼけて移行的になってしまうと、
一気に透明感を失います。
実際に画像加工し、
境界線をひたすらぼかしてみましょう。
ビフォーアフターです。
これはこれでなんだか綺麗な気もしますが、
透明感が乏しくなった印象を受けると思います。
それでもまだ最低限透明感を保っているのは、
境界がぼけても額縁効果が残っているからです。
加工前の写真は対比効果によって、
強い透明感を得られていたことがわかります。
以上です。
如何でしたでしょうか。
実際に透明感溢れる写真を加工し、
透明感溢れるものにはどの様な特徴があるのかを
把握できたのではないかと思います。
今回はここまでです。
次回は、
『ゼロから始めるステイン講座 Ⅴ』
透明だけど透明感がない?
モノリシックセラミックスについての考察 ③
に続きます。
【過去の関連ブログへのリンク】
~気になるステインの選び方~
~内部ステインと
外部ステインのコンセプト~
透明だけど透明感がない?
モノリシックセラミックスについての考察 ①
ライター 髙瀬 直