☆彡Grossブログ:ゼロから始めるステイン講座 Ⅱ ~内部ステインと外部ステインのコンセプト~

 

『ゼロから始めるステイン講座 Ⅱ』

   ~内部ステインと

      外部ステインのコンセプト~

 

●内部ステインと外部ステインの得手不得手:

 

セラミックスクラウンの築盛法一つに、

かの有名な達人技工士が愛用した

「内部ステインテクニック」

というものがあります。

 

 

工程は流派によってまちまちですが、

築盛方法そのものに大きな差異はありません。

 

基本はボディ陶材の延長上に

透明陶材で壁を作ってそこにステインを施し、

外装を更に透明陶材で覆うというのが

一般的な流れです。

 

特に微細なマメロン表現において有効な手法で、

透明陶材で作った壁に不透明なステインを

用いることで非常に自然な仕上がりになります。

 

また淡い白帯の再現により、

切端の透明度を和らげたい場合にも有用です。

 

簡単に言えば、

内部ステインは透明なものを不透明

または半透明にするのが得意なのです。

 

 

外部ステインは微妙に異なり、

半透明なものに透明感を与える事が

得意だったりします。

 

e.maxなど、「モノリシックセラミックス」への

ステイン法がこれに該当すると言えるでしょう。

 

 

反面、

透明なものに対する不透明なステイン表現は苦手です。

 

とりわけマメロン表現をしようと

外部ステインを施した瞬間、

一気に違和感が出てくる場合があります。

 

また、

不透明なオペークの様なものに透明感を

与えるのも非常に難しいです。

 

まとめてみるとこんな感じでしょうか。

 

表1&2

 

これを見ると、

e.maxインゴットの透明度が高すぎる場合、

ステイニングの自由度が一気に狭まることが

わかります。

 

もちろん支台歯の明度や

色調によって大きく変化しますが、

クリアランスが必要以上に確保されている場合は

注意が必要でしょう。

 

 

透明不透明とはどういう状態か:

 

そもそも透明とか不透明ってどういう状態を指すのでしょうか。

 

 

ここで超大雑把に

透明(透過率90%)

半透明(透過率50%)

不透明(0%)

 

と定義しましょう。

 

※透過と反射に関しては

角度や屈折率も加味する必要がありますが、

長くなる上に脱線しますので割愛します……

 

透明とはガラスの様な物体で、

光をあまり反射せずほとんどが透過するため、

ヒトの目が反射光を捉えられない状態

をいいます。

 

半透明とは、

物体が半分程度の光を反射するものの、

残り半分は突き抜けてしまうため、

ヒトの目が捉えられる反射光が制限されている

状態です。

 

不透明とは、

物体がほとんどの光を反射するため、

光が物体を突き抜けず、ヒトの目が

反射光のほぼ全てを捉えられる状態です。

 

 

●外部ステインは目の錯覚を利用する:

 

人間の目は思いの外、あやふやに出来ています。

 

デルブーフの錯視や

チェッカーシャドウ錯視に代表されますが、

本来小さくないものが小さく見えたり、

同じ色のものが全く異なる色に見えるといった

錯覚は珍しくありません。

 

また補色による吸収効果も、

錯視において大きな効果を発揮します。

 

これらをうまく利用し、

「本来半透明であるものを

   透明に見せかける」のが

外部ステイン法の肝になります。

 

 

内部ステインの場合、どちらかと言うと

「陶材築盛では再現の難しい色や

 キャラクターをステインで表現する」

意味合いが強いです。

 

 

もちろん内部ステインにおいても

錯視や強調効果を利用しますが、

外部ステインと微妙にコンセプトが異なる点は

覚えておいて損はないでしょう。

 

……以上、外部ステインと内部ステインについて

の大概的な解説でした。

 

次回は補色対比や吸収効果の話も踏まえて、

実際どのようにステイニングを施していくのかを

説明したいと思います。

 

           

           ライター 髙瀬 直