『AGCドッペルクローネ!
……って何?』
Grossだと非常に臨床例の多い
「AGCドッペルクローネ」。
簡単に言うとコーヌスクローネの様な
二重冠構造の義歯のことなんですが……、
AGCってなんだか聞き慣れない単語ですね。
そもそもAGCって何なのでしょう。
AGCとは Auro Galvano Crownの略です。
簡単に言えば、シルバーラッカーさえ塗れば
塗ったところに金メッキを分厚く積層できるよ!
といったものになります。
金メッキとは言うものの偽物の金などではなく、
実際に純度99.98%の金が積層可能です。
この特性を利用して、支台歯(副模型)に
直接シルバーラッカーを塗れば、
純金のメタルボンドフレームも製作できます。
サポート形態こそ無いものの焼付強度も十分で、
金属色独特の「暗さ」が出ないのが特徴です。
金色は陶材に自然な赤みを付与し、
まるでオールセラミックスの様に
美しいクラウンが製作できます。
基本的にどんなものにでも積層可能ですから、
例えばこれをコーヌス内冠やテレスコープ内冠に
積層するとどうなるでしょうか?
そう、人間技では実現が極めて難しい、
ぴったり寸法の外冠ができちゃうんです。
何せ鋳造などの間接法ではなく
内冠に直接積層しているわけですから、
適合が良くて当たり前ですね。
そうして製作した外冠を
義歯のメタルフレーム部に埋め込んだものが、
いわゆる「AGCドッペルクローネ」になります。
……なんだかまだよくわかりませんね。
こちらの模式図、及び臨床写真を見ると
多少わかりやすいのではないかと思います。
図1.AGCドッペルクローネ模式図
図2.パラレルミリング加工された
チタンアバットメント(内冠)
図3.アバットメント内冠に積層された
純金の外冠(AGC外冠)
図5.口腔内における「AGCドッペルクローネデンチャー」の外観
臨床提供:茨木県守谷市開業 大津歯科医院;
大津義重院長
さてそんなAGCドッペルクローネですが、
主なメリット、デメリットは下記の通りです。
[ メリット ]
- 義歯着脱時の支台歯への揺さぶりが
少ないため、残存歯に対する予知性が高い - 鋳造外冠と比べて適合精度が高く、
内外冠のパッシブフィットが達成しやすい - クラスプデンチャーに比べてフィット感が高く、
義歯が安定しやすい - クラスプを使用しない為、審美面で優れる
- 外冠に柔軟性があるため、
僅かながら衝撃緩衝が期待できる - 支台歯がダメになった場合も、
該当箇所のリベース修理で対処できる
- 内冠さえ無事であれば、義歯が大破しても
簡単に再製作可能であり、
補修や設計変更も比較的容易 - 維持力が低下しても、外冠の再製作により
容易に回復可能 - インプラントと天然歯の連結が可能
(予後15年症例報告あり)
[ デメリット ]
- 鋳造外冠と比べてAGC外冠は磨耗しやすく、
支台歯の本数が少ない場合は
経年的に維持力が低下することがある
(積層メッキ法または逆ガルバーノ法にて
対応する)
- 外冠再製作は容易でも、金属コストが高い
- AGC外冠への機械的維持付与が難しく、
接着に不備があるとAGC外冠が
義歯から脱離することがある
(再接着により修理可能)
- 支台歯が有髄歯である場合クリアランスの
確保が難しく、前歯部においては
審美的排列が困難となる場合がある
(ドッペルクローネ共通のデメリット)
- 内外冠共に金属コストが高く、材料費だけで
技工料総額の半分に達することもある
大体こんな感じでしょうか。
以上、AGCドッペルクローネの簡単な紹介でした☆
ライター 髙瀬 直