☆彡Grossブログ:AGCドッペルクローネ! ……って何?

 

『AGCドッペルクローネ!
 ……って何?』

 

 

Grossだと非常に臨床例の多い
「AGCドッペルクローネ」。

 

簡単に言うとコーヌスクローネの様な

二重冠構造の義歯のことなんですが……、

AGCってなんだか聞き慣れない単語ですね。

 

 

そもそもAGCって何なのでしょう。

 

 

AGCとは Auro Galvano Crownの略です。

 

 

簡単に言えば、シルバーラッカーさえ塗れば

塗ったところに金メッキを分厚く積層できるよ!

 

といったものになります。

 

金メッキとは言うものの偽物の金などではなく、

実際に純度99.98%の金が積層可能です。

 

 

この特性を利用して、支台歯(副模型)に

直接シルバーラッカーを塗れば、

純金のメタルボンドフレームも製作できます。

 

サポート形態こそ無いものの焼付強度も十分で、

金属色独特の「暗さ」が出ないのが特徴です。

金色は陶材に自然な赤みを付与し、

まるでオールセラミックスの様に

美しいクラウンが製作できます。

 

 

基本的にどんなものにでも積層可能ですから、

例えばこれをコーヌス内冠やテレスコープ内冠に
積層するとどうなるでしょうか?

そう、人間技では実現が極めて難しい、
ぴったり寸法の外冠ができちゃうんです。

何せ鋳造などの間接法ではなく
内冠に直接積層しているわけですから、
適合が良くて当たり前ですね。

 

そうして製作した外冠を
義歯のメタルフレーム部に埋め込んだものが、
いわゆる「AGCドッペルクローネ」になります。

 

……なんだかまだよくわかりませんね。

 

 

こちらの模式図、及び臨床写真を見ると
多少わかりやすいのではないかと思います。

図1.AGCドッペルクローネ模式図

 

 



図2.パラレルミリング加工された

   チタンアバットメント(内冠)

 


図3.アバットメント内冠に積層された
   純金の外冠(AGC外冠)

 


図4.メタルフレームに接着されたAGC外冠

 

 

 

図5.口腔内における「AGCドッペルクローネデンチャー」の外観

臨床提供:茨木県守谷市開業 大津歯科医院; 

     大津義重院長

論文掲載:月刊「歯科技工」別冊;

超高齢社会を見据えたパーシャルデンチャーの製作

~予知性を考慮したリジッドサポートの技工術式~

 

 

 

さてそんなAGCドッペルクローネですが、

主なメリット、デメリットは下記の通りです。

 

 

[ メリット ]

 

  1. 義歯着脱時の支台歯への揺さぶりが
    少ないため、残存歯に対する予知性が高い

  2. 鋳造外冠と比べて適合精度が高く、
    内外冠のパッシブフィットが達成しやすい

  3. クラスプデンチャーに比べてフィット感が高く、
    義歯が安定しやすい

  4. クラスプを使用しない為、審美面で優れる
  5. 外冠に柔軟性があるため、
    僅かながら衝撃緩衝が期待できる

  6. 支台歯がダメになった場合も、
    該当箇所のリベース修理で対処できる

 

  1. 内冠さえ無事であれば、義歯が大破しても
    簡単に再製作可能であり、
    補修や設計変更も比較的容易

  2. 維持力が低下しても、外冠の再製作により
    容易に回復可能
  3. インプラントと天然歯の連結が可能
    (予後15年症例報告あり)

 

 

[ デメリット ]

 

  1. 鋳造外冠と比べてAGC外冠は磨耗しやすく、
    支台歯の本数が少ない場合は
    経年的に維持力が低下することがある
    (積層メッキ法または逆ガルバーノ法にて
     対応する)

 

  1. 外冠再製作は容易でも、金属コストが高い

 

  1. AGC外冠への機械的維持付与が難しく、
    接着に不備があるとAGC外冠が
    義歯から脱離することがある
    (再接着により修理可能)

 

  1. 支台歯が有髄歯である場合クリアランスの
    確保が難しく、前歯部においては
    審美的排列が困難となる場合がある
    (ドッペルクローネ共通のデメリット)

 

  1. 内外冠共に金属コストが高く、材料費だけで
    技工料総額の半分に達することもある

 

 

大体こんな感じでしょうか。

 

以上、AGCドッペルクローネの簡単な紹介でした☆

 

 

 ライター 髙瀬 直