歯科技工士は絶滅危惧種なのか???
~全国歯科技工士学校入学者数の激減~
入学者数の激減
近年、歯科技工士学校への入学者数が著しく減少していることが問題となっている。
平成28年度の歯科技工士学校入学者数を例に挙げると、日本全国53校でわずか1,032名。
これは例年に続き過去最低の数字であったのだが、恐ろしいことに平成29年度の全国入学者数は28年度を大きく下回る927名。
歯科技工士史上初となる、入学者数1,000人未満を記録した大問題となった。
日本最古の歯科技工士専門学校の一つである「愛歯歯科技工士専門学校」が新年度の入学者募集を停止したことからも、
いかに緊迫した現状かお分かりになるだろう。
25歳までに80%が離職していく!
加えて、歯科技工士の離職率問題も忘れてはならない。
新卒の歯科技工士が25歳になるまでの間、約80%が離職することが判明している。
これは日本歯科技工士会が実施した実態調査により判明したもので、予想ではなく過去の統計から見た実数なのである。
つまり現状の離職率が続けば、ただでさえ人数の少ない新卒歯科技工士は、5年後にたった2割しか残らない計算になるのだ。
29歳になるまでには4%しか残らない
恐怖の離職統計はこれにだけ留まらない。
実は前述の日本歯科技工士会の実態調査によると25歳から29歳までの間、更に80%が離職している。
25歳の時点で既に20%しか残っていないため、そこから20%しか残らないとなると、
0.2×0.2=0.04となる。
つまり新卒の歯科技工士が29歳になる頃には、
たった4%しか技工業務に従事していないのである。
1県につき、新卒技工士はたった1名しかいなくなる??
よしんば1,000名が歯科技工士学校を卒業し、国家試験合格後、歯科技工士になったと仮定しよう。
上記の離職率を考慮すれば、25歳までに新卒歯科技工士は200名となり、29歳までには全国で40名しか残らない計算になる。
次世代を担う若手歯科技工士は、47都道府県で1人いるか否かといったところであろう。
数多くの歯科技工士専門学校が廃校となった理由も納得できる。
現役技工士でさえ10年後には40%しか残らない
現在の稼働歯科技工士数は全国で約33,000名と言われているものの、その内約20,000名が既に50歳を超えている。
これは全体の割合にして60%以上であるため、10年後に50歳以上の技工士が定年を迎えた時、
全国からいきなり歯科技工士の数が40%に減少する可能性を示唆している。
この10年間で新卒者の30歳以上が500名程度増加するであろう点を加味しても、
わずか13,500人程度で全国民の補綴装置製作を支えなければならないのだ。
こうした歯科技工士の激減状態に対応するためにも、CAD/CAMのような先進的デジタル技術を迅速に適用することは
極めて重要かつ喫緊の課題なのである。
しかし、この歯科技工士数で日本全国1億2656万人(2018年3月現在)の患者をサポートするためには、
急進的なデジタル技術に頼ったとしてもかなりの危惧を抱く数字と言えよう。
*参考文献: Ztm.大畠一成著:新・集中連載 歯科医療を変える技術革新 Vol.1/ IDS 現地取材で得た歯科医院・歯科技工所のためのニューソリューション:医歯薬出版.『補綴臨床』東京、2018,1月、Vol.51,Nr.01, P29
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*冒頭の図:絶滅寸前の天然記念物 オオサンショウウオ