☆彡Grossブログ:ゼロから始めるステイン講座 Ⅲ

 

『ゼロから始めるステイン講座 Ⅲ』

 

 透明だけど透明感がない?

モノリシックセラミックスについての考察 ①

 

 

高透過性&

マルチレイヤージルコニアの台頭

 

 

かつては「白いメタル」と呼ばれたジルコニア。

 

高い破壊靭性とTOTOじみた白色を有しながらも

透明感が皆無であったことから、

この様な呼称が業界に浸透していきました。

 

近年では、高透過性ジルコニアが開発され、

フルジルコニアクラウンへの適用が

注目を集めたことは記憶に新しいでしょう。

 

加えてマルチレイヤーディスクも開発され、

遂にはプレスセラミックスと遜色ない審美性を

発揮できるまでに至りました。

 

そんな高透過性マルチレイヤーですが、

Grossでは主に松風さんの

「ZRルーセントFA」を多用しています。

 

 

従来のジルコニアと比較し、

遥かに自然な色調が表現できる

 

 

マルチレイヤーのセールスポイントとして、

ステインに頼らずグラデーションが表現可能で、

時間短縮を狙える点が強調されていますね。

 

実際、サービカルから切端にかけてまで

境界の無い自然なグラデーションが

再現されています。

 

またシェードのバリエーションも

A1相当~A3相当と標準的なラインナップです。

 

成程、確かにこれならステイン不使用でも、

研磨仕上げだけで自然に口腔内に

調和してくれるかもしれません。

 

 

 

透明性が高く色調も自然。

でも透明感は?

 

 

では、フルジルコニアの外部ステインは

今後は不要化していくのでしょうか?

 

前歯補綴だとしても、フルジルコニアの研磨法で

対応可能なのでしょうか。

 

私はそうは思いません。

 

研磨仕上げで問題がないのは、

高度な審美性を求めず、強度と滑沢性を重視する

臼歯部に限定された話だと思っています。

 

何故なのでしょう。

 

「そりゃ、前歯単冠ではステイン必要でしょ!」

ええ、確かにその通りです。

 

ただ、ステインの使用は

キャラクタライズの付与だけに

限った話ではありません。

 

例えばキャラクタライズを必要としない

6前歯補綴においても、ステインの塗布は

絶対的に必要だと思っています。

 

何故なら、高透過性マルチレイヤージルコニアは、

ステインや浸透型カラーリキッドを使わない限り、

高透過性にも関わらず、透明感に乏しい

のです。

 

高透過性なのに透明感が乏しい。

一体どういうことだってばよ?

ステイン関係あんの… それ?

 

 

「透明」と「透明感」は異なる

 

ここでこちらの写真をご覧ください。

 

 

巷で人気のガラスの地球儀です!

 

どうですこれ、すごく透明感がありませんか!?

 

・・・・・・うーん?

ちょっと待ってください。

そんなわけないじゃないですか。

 

今皆様が目にしているのは、

PCやスマホの画面ですよね?

iPhoneとかパソコンって透明でしたっけ?

 

 

・・・・・・意地悪な物言いになりましたが、

つまり透明感とはこういうことなのです。

 

 

皆様がご覧になっているガラスの地球儀の写真は、

画面に映し出された映像でしかありません。

 

実際に透明な物体ではないのに、

透明感溢れて見えているのです。

 

極端な言い方をしてしまえば、

その物体が透明であるかどうかと、

透明感があるかどうかは別の問題

なのです。

 

素材の光透過性が高いからといって、

透明感があるかどうかは別なのです。

 

もちろん、光透過性が高い素材の方が

透明感の表現は著しく容易です。

 

しかしながら、透明感を表現するために必要な

特徴やルールを無視してしまうと、

例え素材が良くても

性能を十分に発揮できず、

口腔内で浮いてしまう可能性が高い

のです。

 

天然歯は本来とても透明感のあるものですから、

口腔内で自然に調和させる為には透明感の表現は

欠かせないものになってきます。

 

ステイン法も築盛法も、結局のところ

「如何に透明感を出すか」

がキモになってくる部分だと思います。

 

 

今回はここまでです。次回は

ゼロから始めるステイン講座Ⅳ

透明だけど透明感がない?

モノリシックセラミックスについての考察 ②

に続きます。

 

   ライター 髙瀬 直