☆彡Grossブログ:ジルコニアは模型上で咬合調整しちゃいけない!……って本当?

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  • 「ジルコニアは模型上で

 咬合調整しちゃいけない!   

               ……って本当? 」

 

 

結論から言って、

ジルコニアクラウンを支台歯模型に

嵌めたままの咬合調整はNGです。  

 

 

私は切削加工クラウンを削る時、

必ず支台歯から外して切削しています。

 

 

え…?メタルボンドで散々やってきたけど

トラブルなかったよ?

 

イチイチ模型から外してたら、

保険のクラウンは数が多いから

仕事終わらなくなるよ!

 

 

おっしゃる通りです。

 

 

しかし、メタルレストレーションの場合は

支台歯模型に入れたまま削ったところで、

大きな問題になり辛いのです。

 

 

では、

何故ジルコニアはダメなのでしょう。

 

 

答えは適合性の相違にあります。

>> 過去のブログで述べました通り、

現行の仕様において

切削加工クラウンはマージン部などの

鋭縁部の再現性において難があります。

 

 

当然、スキャン時に再現しきれなかった箇所は

干渉部位になりますので、

大抵の切削加工クラウンは

下図のように削り出されてきます。

図1:マージンが干渉して浮き上がっている状態

 

なるほど、これはマージン部内面から

先に調整しなければ適合しなさそうですね。

 

 

実際にジルコニアクラウンの多くは、

マージン部を調整しまくることによって

適合させています。

 

 

マージン部の調整が面倒な場合は、

山本眞先生発案の「エッジ延長法」を使う

ことで問題が解決します。

 

鋭縁の多い支台歯の場合、

リリーフすることである程度対処可能です。

 

 

ただし的確に行わないと緩くなりやすいので、

リリーフするポイントを絞ることが大切です。

 

 

ところがリリーフは作業工程的に簡単な反面、

マージン延長法はきちんとやろうとすると

結構な時間を要する作業です。

 

仕事量の多いラボにおいては、

つい怠りがちになってしまうこともあり得ます。

 

 

いやいや、肉眼では問題なさそうに見えるし…!

 

別に内面調整とか延長法とか、

やらなくてもいいんじゃないの?

今のCAD/CAMは本当に精度上がったから、

別にそんなことしなくても適合してるよ!

 

 

私はそのように思いません。

 

図1の状態、肉眼ではおよそ適合しているように

見えてしまうのが大問題なのです。

10倍程度のマイクロで覗いたところで、

人によっては適合していると判断する場合もある

かもしれません。

 

確かに肉眼では適合しているように見える

でしょう。

 

口腔内にセットしたところで、

このギャップに気づけるドクターは

少数派の様な気もします。

 

 

しかし図1をよく見れば、

ジルコニアクラウンは支台歯模型に対して

マージン部と軸面でしか接していません。

 

この状態でクラウンに振動や衝撃を加えたら

どうなるでしょうか。

 

 

とりわけ鋭縁となっていることの多い

模型のマージン部が、

簡単に欠けて壊れてしまうのです。

 

 

支台歯模型にジルコニアクラウンを

嵌めた状態で咬合調整をするというのは

こういうことです。

 

唯一の支えで合ったマージン部が

失われるわけですから……、

ジルコニアクラウンは支台歯模型に対し実際の

口腔内よりも深く沈み込むことになります。

 

図1の浮き上がりがなくなるわけですから、

パっ!と見、適合が良くなったように

感じますよ?

 

あくまで模型上では

 

 

この場合、口腔内にクラウンをセットした際の

咬合高径は必ず高くなります

 

その分低くしておけば良いという考え方もある

かもしれませんが、

これは誤魔化しの範疇を逸脱しません。

 

 

更に肉眼で合っている程度のマージンでは、

歯肉の退縮などのリスクも視野に入ってくる

ことでしょう。

 

 

切削加工クラウンは従来のキャスタブルクラウン

とは別種の補綴装置ですから、

咬合調整一つとっても

同様に行ってはいけないのです。

 

 

歯科技工士は

補綴装置に対するプロフェッショナルです。

 

より良い装置を製作するためにも、

マテリアルの特徴や欠点といった機微には、

常に敏感でいなければならないと思います。

 

     ライター 髙瀬 直